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石田嵩人知事 独占インタビュー:「躍動する福井」の設計図

著者:VERA VON MONIKA

現代の日本において、地域のリーダーシップには単なる行政運営を超えた役割が求められています。知事たちは今や、人口減少、文化の保存、国際的な発信力、そして経済の再構築という課題を同時に乗り越えることを求められています――地域の現実と、グローバル化が進む社会との均衡を図りながら。

Governor Takato Ishida Exclusive Interview: The Architecture of “Rising Fukui”

写真:福井県庁

2026年に日本史上最年少の都道府県知事として選出された石田貴都氏は、まさにそうした時代の交差点から生まれた新しい世代のリーダーを体現しています。外務省での外交官経験とジョージタウン大学での学びを背景に、石田氏は福井県を単なる地方行政の単位としてではなく、長期的な視点でその価値を育てていくべき文化・経済圏として捉えています。

しかし、その根底にあるのは、徹底して地域に根ざした視点です。高まる国際的な注目の裏側には、彼が「県民ファースト」の政策立案と呼ぶ一貫した姿勢があります――地域社会との直接的な関わり、世代を超えた協力、そして福井の産業・文化的基盤の保全です。

そのバランスは、対比によって特徴づけられる福井県において特に際立っています。先進的な製造業と並び立つ永平寺の精神的遺産、AIや宇宙産業の発展と共存する越前の伝統工芸、そしてデジタル化が進む観光経済の中に息づく静かな禅の伝統。

ヨーロッパと日本の文化的対話を長年見つめてきた私にとって、石田氏の視点が特に印象的だったのは、国際的な感覚と地域への深い根差しを両立している点でした。

この独占インタビューでは、石田知事が「躍動する福井」の哲学、国際的な存在感を追求しながら真正性を維持することの難しさ、そして地方の日本こそが未来に向けた重要な文化的示唆を持っていると考える理由について語ります。


石田知事、ジョージタウン大学でのご経歴と国際的なご経験は、グローバルな視野を反映しています。伝統ある日本の県を率いる立場として、この国際的な視点と地域の現実との間で、どのようなバランスを最も意識してこられましたか?

外交官時代は、日本国政府の方針や施策を相手国に説明するため、「発信力」が求められた。

知事就任後は「発信力」に加え、県民の声を聞く「受信力」が大切だと思っており、「徹底した県民目線」での県政運営を目指している。

県民はもちろん、市町、企業などの団体がお持ちの課題は様々であり、考えられる解決策は一つではない場合も多い。そのため、皆さんからお話を伺うとともに、できる限り現地に足を運んで実際に確認することを徹底したい。 そのうえで課題を整理し、皆さんが納得できる方針を示すことが、知事として私が果たす役割であると考えている。

多くの地方が、独自のアイデンティティを失うことなく経済成長を追求することに苦心しています。今後十年間にわたり、福井の発展がその本来の魅力を薄めるのではなく、むしろ強化するために、どのような優先事項を掲げておられますか?

福井県において、繊維や眼鏡産業は地場の基幹産業であり、繊維産業は西暦2~3年ごろから始まったと言われており、非常に歴史のある産業である。

また、越前和紙や越前打刃物など、多くの伝統産業が集積しており、その技術は世界でも評価されている。

これらの産業は、独自性を保ちながら魅力を損なうことなく長い期間、福井県の産業を支えており、引き続き必要な支援を行いながら大切に発展させていきたい。

福井に対するご自身のビジョンを最も象徴している最近の取り組みやプロジェクトについて、お聞かせいただけますか?また、それによってどのような影響が生まれていますか?

私が描く福井のビジョンは、世代を問わず一人ひとりが前向きに挑戦し、夢や自己実現が叶う「躍動する福井」を実現することである。

その実現に向けては、私の信念である「常に相手をリスペクト」を県政運営の基本方針とすべく、若い方もベテランも互いに認め合える「全世代リスペクト」を掲げている。

例えば、今年4月に初めての試みとして、若手職員を中心に私も入って政策立案に向けた議論を行う「政策ミーティング」を実施した。若手職員と忌憚のない活発な議論を交わすことで、若手職員のモチベーション向上にもつながる可能性を感じており、引き続き、お互いの課題を共有しながら政策について議論を交わしていきたい。

例えば、今年4月に初めての試みとして、若手職員を中心に私も入って政策立案に向けた議論を行う「政策ミーティング」を実施した。若手職員と忌憚のない活発な議論を交わすことで、若手職員のモチベーション向上にもつながる可能性を感じており、引き続き、お互いの課題を共有しながら政策について議論を交わしていきたい。
また、私自身が企業や団体など現場に積極的に足を運び、県民と直にコミュニケーションをとることで、県民目線に立った県民本位の政策を講じていきたいと考えている。

“ひいては、世代をつなぎ、若い方もベテランも互いに尊重し合い、自分の意志と責任で夢や希望に挑戦できる社会、「躍動する福井」を県民とともに作っていきたい。”

文化的遺産は、ときに単なる観光資源として消費されてしまうこともあります。福井の職人技や禅の精神が、日常の中で生きた意味ある文化としてあり続けるために、どのような取り組みをされていますか?

本県は、世界的に有名な眼鏡や繊維、伝統工芸品などが作られている国内有数のものづくり産業の集積地である。

様々な産業の集積に至るまではそれぞれに長い歴史があり、特に長いものでは1500年以上続いており、海外でも高い評価を受けた例として、17世紀のオランダの画家 レンブラントの版画に越前和紙が使われたとも言われている。

県では県内の職人と県外デザイナーをマッチングし、従来の伝統工芸品を現代のライフスタイルに合わせてアップデートする商品開発を行っている。例えば、越前和紙では、手漉き和紙と同じプロセスを用いて、廃棄予定の野菜や果物を原料とした紙商品を開発するなど、SDGSを意識した取組みを進めている。さらに、昨年末にユネスコ無形文化遺産登録された越前和紙の一つ「鳥の子紙」(とりのこし)を活用した新商品の開発なども検討している。

また、伝統的工芸産業の担い手となる職人を確保するため、関係市町や組合と連携し、全国から職人を志す若者を募集し、職人になるために必要な研修の実施、さらに研修期間の生活費等を最大4年間支援している。

北陸新幹線の延伸は新たな機会をもたらす一方で、競争の激化も意味します。より大きな都市圏と並ぶ中で、福井が持つ最も際立った強みは何だとお考えですか?

外国人旅行者にとって福井をデスティネーションとして選ぶ価値は、世界レベルの本物を静かに、深く体験できることだと考える。

福井の魅力はたくさんあるが、「ZEN」と「恐竜」に集約してお伝えしたい。

  1. 「ZEN Alive.Fukui」~身も心も満たされる“ZEN”が息づく福井~ 福井の暮らしや文化の根底には、「ZEN」の精神が静かに息づいている。永平寺に代表される精神文化だけでなく、越前和紙、越前漆器、越前打刃物などのクラフト、越前がに、へしこ、地酒、精進料理などのガストロノミーも、全ては丁寧に向き合い、自然と調和し、心を整える」という「ZEN」の価値観とつながっている。職人の工房での特別な深い体験や、福井でしか味わえないガストロノミーは、旅行者に静かに本物と向き合う時間をもたらす。
  2. 世界的な恐竜ブランド・恐竜王国 福井県立恐竜博物館は世界トップクラスの恐竜研究拠点として、国籍を問わず高い人気を誇る。特にファミリー層にとっては、学びとワクワクが共存する特別な体験となり、福井を訪れる大きな動機となっている。

福井は京都とも深いつながりがある。京都に隣接しながら日本海にものぞむ福井は、古代から塩や海産物など豊富な食材を都に送り、朝廷の食を支えてきた「御食国」(みけつくに)の一つである。東京、大阪、京都などの人気観光地を楽しむ一方で、過度に観光地化されていない福井を旅の目的地として選び、「ZEN」の精神が息づく文化や、京都の食文化を支えてきた美食、そして世界レベルの恐竜体験を通じて、本物の日本を静かに深く味わっていただきたい。

地方の日本は引き続き、若い世代を惹きつけるという課題に直面しています。若いプロフェッショナルや起業家にとって、福井を魅力的な場所にするうえで、最も重要な要素は何だとお考えですか?

若い世代を引き付けるためには、「魅力的な企業」と「魅力的な働き方」が重要と考えている。

そのため、以下の取組みを実施している。

  • 企業誘致については、都市圏並みの給与水準の企業や研究開発型で専門知識が活かせる企業などの誘致
  • 地場産業については、 宇宙産業やAI・Iotなどの成長分野における技術開発を支援
  • 県内企業に対するテレワーク導入のための伴走支援や男性育休促進のための奨励金の支給

今後も、世界三大産地のひとつと言われている福井の眼鏡産業や、衣料だけでなく、自動車や宇宙産業にも組み込まれている繊維産業といった地場産業に加え、打刃物や和紙などの世界に通じる技術を応援していく。

また、若者が自己実現できる県内企業を増やすため、テレワークや短時間勤務など多様な働き方の導入支援や、創業を志す若者のチャレンジの支援など、若者目線での産業労働政策を進めていく。

福井は、永平寺に象徴される精神的遺産と、「恐竜王国」としての自然的アイデンティティという、非常にユニークな二面性を持っています。これらの象徴的な要素の保全と発展を、どのように両立させていこうとされていますか?

福井県には、永平寺や恐竜をはじめ、豊かな自然や美しい景観、歴史・文化といった、連綿と受け継がれてきた地域ならではの魅力が数多くある。県では、こうした魅力を将来にわたって高めていくため、地域の特性を活かした開発や再整備に取り組んでいる。

例えば、「禅」の大本山永平寺では、福井県、永平寺町、永平寺の三者が連携して、永平寺門前を一体整備するプロジェクトに取り組んできている。外国からの参拝者に配慮した宿泊施設の整備や、旧参道と河川の一体的な修景、観光案内所の設置を行うなど、永平寺門前を「凛とした禅の心を体感できる環境」に磨き上げるとともに、永平寺川沿いから参拝し門前を通って帰る周遊ルートの確立など、国内外からの訪問者の受け入れを推進している。

また、福井県立大学では、昨年4月に「恐竜」の名前を冠した学部を、国内で初めて設置し注目を集めている。今年の4月には博物館の隣に拠点となる勝山キャンパスが完成した。恐竜博物館との人的・物的な連携、新種恐竜の発掘現場などでのフィールド科学の実践、デジタル技術を活用した新たな研究手法が特色の、従来にない研究・教育と地域が一体となった学びの場となっている。

このように、禅に代表される精神文化や、恐竜王国という福井を象徴する要素をアップグレードしながら、同時にプロモートする取り組みを進めている。

写真:福井県庁

知事として、福井の国際的なイメージ形成にどれほど意識的に取り組んでおられますか?また、最終的にどのような認知や印象を世界に確立したいとお考えですか?

福井の国際的なイメージ形成については、過去に例がないほど意識して取り組んでいる。例えば、私のSNSでの情報発信においては、日本語に加えて英語でも投稿するなど、世界に向けても、届く、伝わる情報発信を強く意識している。また、これまでの国際経験を活かし、今後は自らも世界(現地)に赴き、トップセールスをすることによって、福井の魅力が世界的に認知されるよう、取り組んでいく。

福井県は、ZENや恐竜だけでなく、伝統工芸、本物の自然・文化、特別な食材など、探せば探すほど魅力があふれている。こうした質の高い観光資源を、旅の目的となるストーリーとしてどう発信するかが重要だと考えている。

ZEN×食、食×クラフトなど、県内に点在する魅力を掛け合わせ、付加価値のあるストーリーとして束ねることで、世界に対して福井の価値を届けたい。先人たちが培ってきた福井ならではの歴史・伝統、食文化などが高く評価され、「本物の日本文化」=福井という認知を広げていきたい。

個人的なお話になりますが、公務の道を志された最初のきっかけは何だったのでしょうか?また、福井県の未来を担う立場となった今、その思いはどのように変化してきましたか?

大学生時代のアメリカ留学中に東日本大震災が発生したが、被災地の悲惨な現状を報道で見聞きし、日本人としてのアイデンティティが形成され、「日本人として日本のために働きたい」という思いを強く持ち、卒業後に外交官になることを決意した。

外交官として、ザンビアやオーストラリアで仕事をしていたが、現地でともに仕事をした仲間達が自身の故郷に対する愛着やプライドを持って全力で仕事をしていたことに感激したことが、私自身にとっても改めて故郷を見つめ直す契機となった。「生まれ育った福井のために力を尽くしたい」という福井人としてのアイデンティティを強く持つようになり、福井県の知事を志すようになった。

知事就任後、たくさんの県民や企業・団体の皆さんとお会いした。皆さんから、福井に対する強い愛着、福井への誇りなどのお話を伺うとともに、実際に生じている課題などリアルな声を聞き、「生まれ育った福井のために力を尽くしたい」という思いがより強くなっている。

福井のために実際に働く機会を与えてくださったことに対して感謝しながら、日々の業務に全力で取り組んでいる。

最後に、福井の未来と世界における位置づけについて、国際社会に向けて伝えたいメッセージやビジョンがあればお聞かせください。

ぜひ福井にお越しいただきたい。本物の価値を、ぜひ福井で体験していただきたい。絶対に後悔はさせません。

福井には、ユネスコ無形文化遺産に登録された越前和紙や県立恐竜博物館、禅の里・永平寺、「年縞」が形成された三方五湖など、世界に誇れる豊かな文化・歴史・自然が息づいている。

また、眼鏡や繊維など、伝統を引き継ぐ世界トップクラスの技術力を誇るものづくり産業、米やそば、豊富な海産物に代表される、自然の恵みを活かした食文化も根付いている。

さらに、幸福度日本一と言われる福井には、先人たちが築いてきた暮らし・商い・ものづくり、地域で綿々と積み重ねられてきた知恵との営みがある。

これらは、持続可能性やウェルビーイングが重視される現代社会において、世界に共有できる価値だと考える。

この福井の魅力を、確実に世界に「届ける」ことが私の大きなミッションの1つと考えている。伝統工芸から現在の産業にまで息づくものづくりの精神や禅など、丁寧に積み重ねてきた価値を世界に届け、世界に誇れる福井を次の世代に着実に引き継いでいきたい。

「ぜひ福井にお越しいただきたい。本物の価値を、ぜひ福井で体験していただきたい。絶対に後悔はさせません。」 ― 石田嵩人 福井県知事

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